訪問看護ステーションで働く理学療法士は何をするのか。訪問リハビリとは何が違うのか。仕事内容、メリット・デメリット、向いている人を、厚生労働省の資料をもとに整理しました。
※本記事は筆者(整形外科クリニック勤務を中心に約10年)の実体験ではなく、厚生労働省の資料などの公開情報をもとに整理したものです。制度や数値は変わることがあるため、最新は公式でご確認ください。
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訪問看護と訪問リハって、何が違うんですか?



僕も最初は「同じようなものかな?」と思っていました。制度の違いを、表でまとめています。
訪問看護ステーションとは
訪問看護ステーションは、看護師などが利用者の自宅を訪問し、療養生活を支援するサービスを提供する事業所です。
看護師だけでなく、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が訪問することもあります。
人員基準では、保健師・看護師・准看護師などの看護職員を、常勤換算で2.5人以上配置することが定められています。
一方、PT・OT・STは「実情に応じた適当数」とされており、すべての訪問看護ステーションにリハビリ職がいるわけではありません。
そのため、訪問看護ステーションで働くPTは、看護職員と連携しながら、リハビリの専門性を活かして利用者の生活を支援することになります。
訪問看護ステーションはどのくらいある?
厚生労働省の資料によると、介護保険法に基づく訪問看護ステーションの指定数は、次のように増えています。
- 2020年度:13,459か所
- 2021年度:14,762か所
- 2022年度:16,155か所
- 2023年度:17,808か所
- 2024年度:19,314か所
2025年4月1日時点では、指定数が19,314か所、休止を除いた稼働数が18,754か所でした。
在宅分野は、理学療法士にとっても勤務先の選択肢の一つになっています。
訪問看護ステーションで働く理学療法士の仕事内容
利用者の自宅を訪問し、身体機能や日常生活の状況を確認しながらリハビリを行います。
主な仕事内容は次のとおりです。
1.身体機能の評価
筋力、関節可動域、バランス能力、歩行能力などを評価します。ただし、訪問では身体機能だけを見るわけではありません。
- 家の中を安全に歩けるか
- ベッドから起き上がれるか
- トイレまで移動できるか
- 屋外へ出られるか
病院では問題なく歩けていても、自宅では段差や家具の配置などが原因で転倒することがあります。
そのため、生活環境まで含めて評価することが重要です。
2.日常生活動作の練習
利用者の生活に合わせて、実際の動作を練習します。
- ベッドから車椅子への移乗
- トイレ動作
- 屋内歩行
- 階段昇降
- 屋外歩行
- 買い物や通院に向けた歩行練習
リハビリ室ではなく、実際に生活している環境で練習できることは、訪問分野の特徴です。
3.自主トレーニングの指導
利用者本人や家族に、自宅でできる運動や動作練習を指導します。訪問時間だけで身体機能を変えることには限界があります。普段の生活の中で無理なく続けられる運動を考えることも、PTの重要な仕事です。
4.住環境の確認
自宅を訪問するため、手すり、杖、歩行器、車椅子、ベッド、段差などを実際に確認できます。
必要に応じて、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員と連携し、より安全に生活できる環境を考えます。
5.家族への助言
訪問では、利用者本人だけでなく、家族への支援も重要です。
- 移乗介助の方法
- 歩行介助の方法
- 転倒予防
- 自宅での運動方法
家族が無理なく続けられる方法を、一緒に考えます。
6.看護師などとの情報共有
訪問看護ステーションで働くPTにとって、多職種との情報共有は重要な業務です。
厚生労働省の調査では、リハビリ職が単独で訪問看護を行っている実績がある事業所のうち、「看護職員とリハビリ職が訪問の都度、日々利用者の情報を共有している」と回答した事業所は85.4%でした。
また、「看護職員がリハビリ職と協力して同じ訪問看護の目標を共有している」は78.1%でした。
リハビリだけを単独で行うのではなく、看護職と情報を共有しながら利用者を支援することが大切だと分かります。
訪問看護と訪問リハビリテーションの違い
どちらも利用者の自宅を訪問しますが、制度上の位置づけや事業所の人員基準が異なります。
訪問看護ステーションから行うリハビリ
訪問看護ステーションでは、訪問看護のサービスとして、PT・OT・STが利用者宅を訪問することがあります。
看護職員が常勤換算2.5人以上必要とされ、PT・OT・STは「実情に応じた適当数」です。
看護職を中心とする事業所の中で、PT・OT・STがリハビリを担当する形です。
訪問リハビリテーション
介護保険の指定訪問リハビリテーションは、別の居宅サービスとして位置づけられています。
医師とPT・OT・STを配置する人員基準があり、PT・OT・STが医師の指示や訪問リハビリテーション計画に基づいてサービスを提供します。
目的は、利用者の居宅で理学療法や作業療法などを行い、心身機能の維持・回復や日常生活の自立を図ることです。
違いを簡単に整理すると
| 訪問看護ステーション | 訪問リハビリテーション | |
|---|---|---|
| サービスの位置づけ | 訪問看護 | 訪問リハビリテーション |
| 主な事業所 | 訪問看護ステーション | 病院・診療所・介護老人保健施設など |
| PT・OT・ST | 実情に応じた適当数 | 1人以上の配置基準あり |
| 看護職員 | 常勤換算2.5人以上 | 必須の配置基準ではない |
| 医師との関係 | 訪問看護の制度に基づく | 医師の指示・計画に基づく |
| PTの役割 | リハビリ+看護職などとの連携 | リハビリテーションを中心に支援 |
ただし、実際の仕事内容には事業所ごとの違いがあります。
「訪問看護だから看護業務をする」「訪問リハだからリハビリだけ」という単純な違いではありません。
転職を考える場合は、制度上の違いだけでなく、実際の業務内容も確認することが大切です。



実際に働くと、どんなところが大変なんでしょうか?



施設によって差が大きいので、言い切れないのが正直なところです。確認しておきたい点も、後半にまとめました。
訪問看護ステーションで働くメリット
1.利用者の生活を直接見ることができる
病院では、リハビリ室など限られた環境で評価や訓練を行うことが多くなります。訪問では、利用者の自宅そのものを見ることができます。
「なぜこの人は家の中で転倒するのか」「なぜトイレ動作が難しいのか」といった問題を、実際の生活環境から考えられます。
2.生活に合わせたリハビリができる
自宅には、病院のようなリハビリ機器が揃っているわけではありません。「この人の生活環境で、どうすればできるようになるか」を考える必要があります。
身体機能だけでなく、生活そのものを見ながらリハビリを考えられることは、訪問分野の魅力です。
3.看護師から医療的な視点を学べる
訪問看護ステーションでは、看護師と同じ事業所で働く機会があります。
PTだけでは気づきにくい、バイタルサイン、服薬、病状の変化、医療処置、終末期の対応などについて、看護師から学べる場面もあります。
4.多職種連携を経験できる
看護師だけでなく、医師、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員など、さまざまな職種と関わります。
生活全体をチームで支える視点を、身につけやすいでしょう。
5.病院とは違った臨床経験を積める
訪問では、「治療する環境」ではなく「生活する環境」でリハビリを行います。
住環境、家族構成、介護力、生活習慣、社会参加などを含めて考える力が求められます。
訪問看護ステーションで働くデメリット
1.一人で判断する場面が多い
訪問中は、基本的に一人で利用者の自宅へ行きます。病院のように、すぐ近くに先輩PTがいるとは限りません。自分で状態を評価し、必要に応じて看護師や上司に相談する判断力が求められます。
入職するなら、困ったときに誰へ相談できるのかという体制は重要です。
2.看護師との連携が欠かせない
リハビリだけを見ていればよいわけではありません。
訪問中に利用者の体調変化に気づいた場合は、その情報を看護師などへ適切に共有する必要があります。
多職種連携を負担に感じる人にとっては、大変に感じる場面もあるでしょう。
3.移動時間がある
訪問と訪問の間には移動があります。地域や訪問ルートによっては、移動時間が長くなる場合があります。
4.天候の影響を受ける
車やバイク、自転車などで訪問する場合、雨や雪、強風などの影響を受けます。交通状況によって、予定どおりに訪問できないこともあります。
5.事業所によって忙しさが大きく違う
訪問件数、移動距離、記録業務、スタッフ数、利用者の重症度などによって、忙しさは変わります。
「訪問だから病院より楽」と決めつけず、実際の働き方を確認することが重要です。
訪問看護ステーションで働く理学療法士に向いている人
利用者さんの生活を支援したい人
「筋力を上げる」「歩行能力を改善する」だけでなく、「この人が自宅でどう生活するか」まで考えたい人に向いています。
一人ひとりに合わせたリハビリをしたい人
同じ疾患でも、自宅の環境や家族構成、生活習慣は人によって異なります。
マニュアルどおりではなく、その人の生活に合わせてリハビリを考えたい人には、訪問分野が合いやすいでしょう。
自分で考えて行動できる人
訪問中は一人で判断する場面があります。
困ったときに相談することは大切ですが、自分なりに考えて行動する力も求められます。
多職種連携が好きな人
看護師をはじめ、医師、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員など、さまざまな職種と関わります。
「チームで利用者を支えたい」という人には、向いているでしょう。
転職前に確認しておきたいこと
訪問看護ステーションへの転職を考えるなら、給与や休日だけでなく、実際の仕事内容にも目を向けることが重要です。
次の項目は、働きやすさに大きく関係します。
- 1日の訪問件数
- 1件あたりの訪問時間
- 移動時間
- 記録業務
- リハビリ職の人数
- 看護師との情報共有方法
- オンコールの有無
- 急変時の相談体制
訪問看護ステーションは、事業所によって特徴がかなり異なります。「訪問看護」という名前だけで仕事内容を判断しないことが大切です。
まとめ
訪問看護ステーションは、理学療法士にとって在宅分野で働く選択肢の一つです。
利用者の自宅で、身体機能の評価、日常生活動作の練習、自主トレ指導、住環境の確認などを行います。
訪問看護ステーションから行うリハビリと、介護保険の訪問リハビリテーションは、同じものではありません。
訪問件数や移動時間、記録業務、相談体制などは事業所によって異なるため、「訪問看護だから働きやすい」と決めつけず、実際の働き方を確認したうえで職場を選びましょう。
よくある質問
- 訪問看護ステーションの理学療法士は、一人で訪問しますか?
-
基本は一人で訪問するケースが多いようです。不安な方は、同行訪問や教育体制の有無を事前に確認しておくと安心です。
- 訪問看護と訪問リハは、何が違いますか?
-
提供する事業所や、利用できる制度が違います。記事中の表で整理しているので、あわせて見てみてください。
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