サッカーを見ていると、選手が膝に手をついて呼吸を整える場面をよく見ます。「疲れているから」だけではなく、身体の仕組みから見ると回復しやすい姿勢でもあります。理学療法士の視点で解説します。
疲れると身体の中で何が起きているのか
サッカーはダッシュとストップを繰り返すスポーツです。短時間で高強度の運動をすると、心拍数と呼吸数が上がり、筋肉が疲労して酸素が不足しやすくなります。身体は早く酸素を取り込みたい状態になっています。
なぜ膝に手をつくと呼吸が楽になるのか
膝に手をつく姿勢は、専門的には前屈位と呼ばれます。主なメリットは3つです。
① 呼吸に使う筋肉を使いやすくなる
呼吸には横隔膜だけでなく、胸鎖乳突筋・斜角筋・肋間筋など多くの筋肉が関わっています。前屈姿勢になると、これらが働きやすくなり、呼吸効率が上がります。
Michaelsonら(2019)の研究では、大学レベルのサッカー選手で、手を頭に置く回復と膝に手をつく回復を比較し、インターバルランニング後は膝に手をつくグループで心拍回復が改善したと報告されています。
② 横隔膜が動きやすくなる
体幹を少し丸めることで横隔膜が動きやすくなり、より深く呼吸できる状態になります。
③ 回復を早める姿勢になる
呼吸がしやすくなると、酸素摂取量が増え、心拍回復が早まり、疲労回復が促進されます。選手は無意識に、一番回復しやすい姿勢をとっているのです。
一般の人も自然にやっている
全力で走ったあとや、階段を急いで登ったあとに、気づくと膝に手をついていませんか。身体が本能的に回復しやすい姿勢を選んでいるからです。
まとめ
サッカー選手の何気ない動作は、身体の仕組みで考えると合理的なものが多くあります。次に試合中に膝に手をつく選手を見たら、「回復を早めているんだな」と思い出してみてください。
参考文献
Michaelson JV, Brilla LR, et al. 2019. Hands-on-knees vs hands-on-head recovery in collegiate soccer players.(タイトルは要約、正確な書誌情報は原典でご確認ください)
※数値は元論文・各機関の公表内容に基づく一般情報です。最新の情報は原典でご確認ください。
