「患者さんと何を話せばいいのかわからない」「リハビリ中の沈黙が気まずい」と悩む理学療法士向けに、会話が今も苦手な筆者が、10年の臨床で実際に意識してきた方法を5つにまとめました。
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筆者自身、10年間理学療法士として働きましたが、患者さんとの会話が得意かというと、そうではありません。先輩PTが患者さんと笑い合っているのを見て、かっこいいなと憧れたこともあります。ただ、臨床経験を重ねる中で、無理に面白い話をしたり、患者さんを笑わせたりする必要はないと感じるようになりました。大切なのは、患者さんが話しやすい状況を作り、必要な情報を聞き出して、「この人なら任せられる」と信頼してもらうことです。
1.最初の挨拶で「この人なら任せられそう」と思ってもらう
初対面で意識していたのは、最初に自分の立場をはっきり伝えることです。「理学療法士の○○です。よろしくお願いします」と挨拶します。患者さんの中には、「リハビリをする人=理学療法士」と知らない方もいます。最初に伝えることで、専門的な資格を持った人だという安心感につながります。会話が苦手な人ほど、最初から面白い話をしようとしなくて大丈夫です。しっかり挨拶する、名前を伝える、理学療法士であることを伝える、話を聞く姿勢を作る、これだけで十分です。
2.患者さんが話すタイプか見極めて、まずは最後まで聞く
「話を聞くことが大切」とはよく言われますが、相手に応じた使い分けが必要だと思います。自分からどんどん話す人もいれば、聞かないとほとんど話さない人もいます。
- 沈黙は必ずしも気まずいものではなく、患者さん自身に話してもらう時間にもなる
- 話の途中に聞きたいことを思いついても、基本的に最後まで聞く
- 1回の会話で聞く質問は1〜2個程度にし、聞きたいことの優先順位を決めておく
- 話が長い患者さんには、「なるほど。それで、腰の痛みについてなんですが……」と一度区切って本題に戻す
大切なのは、遮るのではなく「あなたの話は聞いています。そのうえで、症状を理解するために聞いています」という姿勢を見せることです。
3.患者さんの言葉を勝手に解釈せず、そのまま返す(オウム返し)
たとえば「起き上がるときに腰が痛いです」と言われたとき、「動くと腰が痛いんですね」と返すこともできますが、「起き上がるとき」と「動くとき」では意味が違います。こちらの解釈で言い換えると、本来の訴えからズレる可能性があります。「起き上がるときに腰が痛いんですね」とそのまま返します。階段なら、×「動くと膝が痛いんですね」ではなく、〇「階段を上るときに膝が痛いんですね」です。
初対面の患者さんは、症状を正確に理解してもらいたいからこそ、少しのズレでも否定してしまいがちです。そのため、そのまま返すことが「ちゃんと聞いてくれている」という感覚につながります。そのうえで、「階段を上るときに膝が痛いんですね。上るときだけですか」「何段目くらいから痛くなりますか?」と詳しく聞いていきます。流れは、受け取る→そのまま返す→必要なところを詳しく聞く、です。
4.答えやすい質問から始め、仮説を持って聞く
話が広がらない患者さんに、「普段の生活ではどんなことで困っていますか?」といきなり聞いても、答えるのが難しいことがあります。そこで、「夜も痛みますか?」「歩くと痛いですか?」「階段は痛いですか?」など、「はい・いいえ」で答えられる質問から始めていました。「階段は痛いです」と言われたら、「上るときですか?下りるときですか?」「どのあたりが痛みますか?」と具体的にしていきます。
質問内容をゼロから考える必要はありません。診察からリハビリ室までの動きやカルテの情報を見て、あらかじめ「この動作で困っていそうだな」と予想しておきます。その病名でよく出る症状があれば、「この病名の患者さんだと、こういう症状が出ることが多いんですが、○○はどうですか?」と聞いてみます。丸投げせず、ある程度仮説を持って質問する、ということです。これは患者さんを評価するうえでも重要だと思っています。
5.初回は無理に雑談せず、症状を深掘りする
天気や趣味の話をして距離を縮める方法も紹介されますが、筆者は初回から無理に雑談する必要はないと思っています。初回に大切なのは、何に困っているかを理解することと、治療を任せても大丈夫だと信頼してもらうことです。
たとえば「趣味でテニスをしています」と言われたら、趣味そのものを掘り下げるのではなく、「週に何回くらいやっていますか?」「テニスをすると痛みが出ますか?」「どの動きで一番困りますか?」と、症状や生活につなげて聞きます。「何を話せばいいんだろう?」ではなく、「この患者さんを治療するために何を知る必要があるか」を考えると、話題を探す必要がなくなります。患者さんは世間話をしに来たのではなく、治しに来ています。雑談するタイミングは、筆者の場合、症状が改善し始めてからでした。症状が良くなってくると、患者さんのほうから趣味や仕事の話が自然に出てくるようになります。症状が変わらないのに治療以外の話ばかりでは、不信感につながることもあります。
会話が苦手でも、話し上手になる必要はない
面白い話をする必要も、患者さんを笑わせる必要もありません。大切なのは、「この人は自分の話をちゃんと聞いてくれる」「自分の症状を理解しようとしてくれている」と思ってもらうことです。
コミュニケーションの本を参考にしたい方へ
筆者が患者さんとのコミュニケーションを考えるときに参考にした本の一つが、『人は話し方が9割』です。会話に悩む方の参考になるかもしれません。
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