唐突ですが、皆様、ご利用者様の移乗介助ってどうされていますか?
ご利用者様の能力を維持向上させるために現在の機能を最大限に活かして介助を行う、時間的制約があるから介助量が多い方でも一人で行う・・・。色々な背景やいろいろな考えがあって様々な方法を実施されていると思います。今回は、移乗の一つの方法として使用される、トランスファーボードに関して書いていきたいと思います。

なぜ道具を使うのか
『道具を使うのはめんどくさいし時間がかかる!!』といったような意見も多いと思います。ですが、移乗に限らず、人力のみの介助には大きな問題があります。

それは『腰部の負担増加』です!

以前の記事で、平成6年9月に策定された「職場における腰痛予防対策指針」が改訂されたことに関して少し触れさせていただきました。改訂事項の中には、適用対象を介護・看護作業全般にも広げる事などがあり、介護に携わる者にとって、また超高齢社会を迎えた日本にとって、介護と腰痛というものがとても深刻な問題となっていることが伺えます。
その指針には『人力による重量物の取扱い』という項目がありますので、抜粋したものを以下に記載します。

(1) 人力による重量物取扱い作業が残る場合には、作業速度、取扱い物の重量の調整等により、腰部 に負担がかからないようにすること。

(2) 満 18 歳以上の男子労働者が人力のみにより取り扱う物の重量は、体重のおおむね 40%以下となるように努めること。満18歳以上の女子労働者では、さらに男性が取り扱うことのできる重量の60% 位までとすること。

(3) (2)の重量を超える重量物を取り扱わせる場合、適切な姿勢にて身長差の少ない労働者2人以上にて行わせるように努めること。この場合、各々の労働者に重量が均一にかかるようにすること。

厚生労働省 『職場における腰痛予防対策指針』より

上記(2)に関して、64kgの男性(日本人の平均体重)で考えてみます。取り扱う物の重量を体重の40%以下ということは、25.6kg以下となりますね。ノルウェーの労働環境法でも持ち上げる動作での限界を取り決めており、12~25kgでは非常に腰痛のリスクが高いと設定しています。

でも、介護される側の方が25kg以下ってあまり無いですよね・・・。

なので、医療・介護現場では持ち上げる動作をなくすための介助方法を考える必要があり、その問題を解消する一つの方法として、道具の利用が挙げられるわけです。

抱え上げない介護
ノーリフトという言葉を耳にされることも多いかと思います。オーストラリアで始まり本格的に導入されている手法で、人力のみの移乗を禁止し、患者さんの自立度を考慮した福祉用具使用による移乗介護を義務付け、『抱え上げない介護』を行っていこうという考えです。トランスファーボードは、その『抱え上げない介護』を実践していくうえで代表される用具のうちの一つです。

トランスファーボードとは
皆様、ご存知だとは思いますが、トランスファーボードとは、簡単に言うと、表面は滑りやすい加工がされ、裏面には滑り止めがついている長方形を基本とした板で、車椅子⇔ベッド等の移乗を安全・円滑に行えるよう支援する福祉用具です。
ある研究ではトランスファーボードの使用により介助者の椎間板圧縮力の減少を認め、腰部負担軽減が出来るとされており、欧米では積極的に使用されています。
では、どのような方が使用する対象となるのでしょうか。移乗動作を行うためには、大きく分けると以下の4つの動きが必要となります。
○立ち上がり
○立位保持
○方向転換
○着座

この4つの動きのどれか1つにでも大きな介助を有し、移乗動作が安全に遂行することができない(独力、介助下共に)、または介助下で行うことは可能だが介護負担が大きい場合に、使用することが推奨されています。
トランスファーボードを車椅子⇔ベッド間に橋渡しするように設置、座位のままその上を滑って移乗するのですが、詳しい使用方法等はまた次回・・・。
今後、トランスファーボードの使用方法や類似商品の比較等を数回にわたって掲載していきますので、腰痛を予防・軽減するため、またご利用者様の離床を促す一つの道具として知識を深めていきましょう!!