作業療法士の河原です。訪問看護ステーションを開設して丸5年が経ちました。失敗と成功を繰り返していますが、何とか訪問看護ステーションの経営は軌道に乗っています。また、私の知り合いや、知り合いの知り合いなど訪問看護ステーションを立ち上げたという話も耳にする機会が増えてきました。しかし、みんなが上手くいってればいいのですが、中にはステーションを閉鎖してしまっているという話も聞きます。残念ながらステーション閉鎖になってしまった方の多くが、非医療従事者や医療介護関係とは別の世界から訪問看護経営に挑戦した方もいらっしゃいました。ですので、今回は医療従事者以外の方が訪問看護ステーションを開設する際の注意点を書こうかと思います。

甘い言葉に騙さるな

「訪問看護起業」や「訪問看護開設」なんかでネット検索すると、訪問看護は儲かりますよ~とか、介護保険だけじゃなくて医療保険も扱うから安心とか、今後の高齢化社会では~とか、国は訪問看護を求めている!!とかまぁ訪問看護開設をすすめるようなサイトやら、コンサル会社がわんさかと出てきます。

しかし!!!世の中そんなに甘くありません。正直なところ10年前なら赤字で書いてるような甘い時代があったんですけどね。訪問看護なんてやってるだけで依頼が来て、訪問看護ステーションにPTOTSTと言った療法士がいるだけでいくらでも依頼が来た時代がありました。でも今は違います。訪問看護ステーションの数は増え、何も売りがないステーションは淘汰される時代です。

ちなみに2015年の訪問看護ステーションの新規数は1384です。対して2015年に訪問看護ステーションを廃止もしくは休止したステーションは661と新規の数に比べてその半数が何らかの理由で稼働できなくなっているのです。

看護師の求人は難しい

訪問看護事業の難しさの一つに看護師の確保や看護師の継続した雇用難しさが挙げられます。私が知るほとんどのステーションでも、看護師確保に苦労しています。それはコンサル会社がついていてもいなくても、、、訪問看護ステーションだけでなく病院や施設などどこでも看護師不足があるわけですから当然と言えば当然ですね。ましてや、非医療従事者が開設する訪問看護ステーションで働こうと考える看護師なんてほんの一握りと言えます。看護師の求人は主に折り込みやネット広告で出しますが、その経費は月に10万円程度かかることもあります。ランニングコストの中に求人費用を入れておかないと計画していた以上の支出となり経営を圧迫します。また、看護師の求人には紹介業者を利用する手もありますが、一人の看護師を雇うのに紹介業を利用すると100万円前後の費用が掛かります。資金面に余裕がある会社であれば紹介会社を利用するのも一つですが、100万円前後の費用を捻出するのが難しい会社が多いのが実際です。

黒字にするのが意外に難しい

平成26年度の厚生労働省の調査では、訪問看護ステーションの収支差率は5.0%です。単純に言えば100万円売りあげれば5万円の黒字が出ているということです。この5%という数字自体はそれほど悪い数字ではありません。しかし平成26年度以前の訪問看護ステーションの収支差率は2~3%を推移していました。この数字は介護保険事業の中でも低い数字と言えます。今後この収支差率を一つの基準に介護保険の改正が行われますので、今収支差率の高い訪問看護事業は時期改定で厳しい結果になる可能性があります。

別の調査では訪問看護ステーションの規模による収支差率にも触れていて、看護師が3人未満のステーションでは50%以上、3~5人未満のステーションでは35%のステーションが赤字経営であると伝えています。つまり、新しく訪問看護ステーションを立ち上げた場合には黒字にするまで時間がかかることが考えられます。私自身の体験で話しますと、ステーションが黒字転換するまでに6ヶ月程度の時間を要しました。ステーション経営としては比較的にスムーズな方だと思っていますが、私たちのステーションだけの力ではなく、それまで働いていた職場などの協力があっての結果でした。

在宅連携の難しさ

医療、介護の世界では連携や情報の共有が非常に大切です。看護師さんも病院の中での連携には慣れていますが、訪問看護では他の病院、他の事業所のケアマネージャーさんやヘルパーさん等、病院とは違った相手と連携を取る必要があります。私は訪問看護ステーションで働いて10年以上になりますが、未だに連携に関しては勉強の毎日です。この連携の取り方一つで、次回からの依頼に繋ることもあります。医師やケアマネージャーさん、他事業所がどのような連携を求めているのか非医療従事者の方が理解するのは難しいのではと思います。

制度・報酬改定が定期的にある

一般の企業と医療介護の世界での違いの一つに、私たちは報酬の多くを税金等公的なお金からいただいているという点があります。そして、その報酬は医療保険であれば2年に1度、介護保険では3年に1度改定があります。今の日本は少子高齢化で財政難が今後も続くわけですので、報酬は基本的には右肩下がりということが予想されます。起業として、訪問看護や介護保険関連の仕事をされる方は今後の制度報酬の改定にも目を向けなければなりません。来年平成30年は6年ぶりの医療介護の同時改定で、私もどのような改定になるかドキドキしながら結果を待っている状態です。

まとめ

訪問看護事業は近年大手の介護保険事業等を手掛けている会社も参入してきています。また、そういった大手の会社であっても訪問看護事業の撤退を余儀なくされている地域もあります。医療や介護を無関係な会社が訪問看護ステーションを経営するのは年々難しくなってきていると思われます。この記事を読まれて、今後の事業展開等の参考にしていただければと思います。