作業療法士の河原です。前回理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として非常勤勤務で働く実態についてお話しましたが、今回はその際に気を付けるべき社会保険料についてです。非常勤で働くことで所得が増える可能性があることについてお伝えしましたが、そこから「社会保険料」や「税金」を自分で支払うことになります。私が非常勤勤務になった時の判断材料なども踏まえて社会保険について書きます。

非常勤の給与についてはこちら
療法士の~いまさら聞けないPTOTSTの年収(非常勤・アルバイト編)②~

社会保険とは

一般的に社会保険とは「医療保険」「年金保険」「雇用保険」「介護保険」「労災保険」を指します。病院や会社で働いているときは当然それらの保険には自動的に入っているので、給与明細を見ながら「たくさん保険料引かれてるなー」くらいに思っている方が多いと思います。一つずつ詳しく解説していきます。

「医療保険」

医療保険に加入していることで保険証が交付され、医療機関利用時に自己負担が3割(69歳まで)になります。医療保険には、健康保険と国民健康保険があります。健康保険に加入できるかどうかは、働く法人の規模と、勤務時間の長さによって変わります。

健康保険の対象者

法人従業員が501人以上→勤務時間20時間以上
法人事業院が500人以下→常勤の4分の3以上の勤務
健康保険は、事業主は上記条件を満たしている対象者に関して加入させる義務があります。しかし、中には条件を満たしていても事業主に断られるケースもありますので注意が必要です。

健康保険と国民健康保険の違い
 健康保険国民健康保険
加入条件あり(勤務時間等)なし
扶養制度ありなし
医療費負担原則3割原則3割
傷病手当金ありなし
出産手当金ありなし
出産育児一時金ありあり
保険料負担会社と個人個人

結婚されている方等であれば不要制度があるか無いかは大きいですし、ケガをした際の事を考えれば傷病手当も大きいですね。医療保険だけでもこれだけ多くの違いがあります。

国民健康保険と任意継続

常勤で働いていた人が、非常勤療法士で働くと決めた人にとってとても重要なのがこの「任意継続」です。
任意継続とは、、、

①任意継続被保険者制度と言い、会社等を辞めたのち最長2年間加入できる保険制度です。
②健康保険資格喪失の20日以内に協会けんぽ支部で手続きをすることで加入することができます。
③家族を扶養に入れることができます。
④国民健康保険とは保険料の計算方法が異なります。

国民健康保険と任意継続どちらを選ぶ?

これはそれぞれにメリットやデメリットがあるので、どちらが良いとは言えません。
ちなみに私が病院での常勤勤務から、非常勤中心の生活に変わった時に選んだのは任意継続でした。
その理由は、私の収入から考えると任意継続の保険料が圧倒的に少なかったからです。

ちなみに、任意継続は扶養家族を入れることは可能ですが、健康保険であった傷病手当や出産手当金は無くなります。

国民建国保険と任意継続保険料の計算方法

前回記載したように、私が非常勤療法士として働いていた時の月収は70万円程度でした。非常勤療法士になると決めた時に自分の収入がどの程度になるかわかりませんでしたが、経験上月収50万以上は確実にあるという自信はありました。そのため、国民健康保険と任意継続を選ぶ際には月収50万円を一つの基準として考えました。

月収50万円の国民健康保険料(大阪市)

国民健康保険の計算方法はこちら(市町村によって異なります)

現在の国民健康保険の保険料は年間495,136円とでました。月に41,261円です。

次に月収50万円の任意継続の保険料(大阪市)

任意継続保険の計算方法はこちら(都道府県によって異なります)

現在の任意継続の保険料は年間340,368円とでました。月に28,364円です。

年間15万円程度変わりますので、私は任意継続を選びました。任意継続の標準収入は上限が月額28万円で設定されていますので、高収入であればあるほど任意継続が有利になります。自分の収入や、扶養家族の有無などを考えて保険を選んでください。

「年金保険」

私が非常勤勤務の療法士として働きだしたのは20代半ば、正直年金のことはあまり考えていませんでした。そういえば、知ってる人の中には「日本の年金システムを信用できない」と、非常勤療法士の道を選んでいる人もいます。

厚生年金と国民年金

公的年金には厚生年金、国民年金、共済年金があります。今回は公務員の方が入る共済年金には触れず話を進めていきます。私も年金について詳しく知らなかったので、これを機会に調べてみました。まぁ基本的に厚生年金の方がメリットが多いのですが、どのようなメリットがあるのか簡単に説明します。

年金保険料

国民年金の保険料は収入に関係なく一律で2016年度は月に16,260円、年間195,120円です。

厚生年金の保険料は収入によって異なります。

月収20万円で月に35,000円程度、年間420,000円
月収30万円で月に52,000円程度、年間624,000円
月収40万円で月に72,000円程度、年間864,000円

そうなんです!!厚生年金って国民年金に比べるとすごく高いんです。ただし、皆さんご存知の通り厚生年金はこの金額を全て個人で支払うわけではありません。会社が半額を支払ってくれます。国民年金に比べて高額な保険料ですが、その半分を会社が支払ってくれるところが大きな違いです。

老後にもらえる年金(老齢年金)の違い

平成27年の厚生労働省によると国民年金の支給額は55,000円
対して厚生年金の支給平均額は147,000円でした。

両者の間には9万円程度の差があり、老後の収入を考えると厚生年金に圧倒的なメリットがあります。ただ、少子高齢化が進む日本で厚生年金が今後も安定した老後の収入に繋がるか疑問を感じている人もいるようです。

障害年金や遺族年金の違い

国民年金と厚生年金には老後にもらえるお金だけでなく、障害者手帳を持った人に対しての年金や、遺族に対しての年金も違います。

 厚生年金国民年金
障害年金対象者障害者手帳等1級、2級、3級障害者手帳等1級、2級
障害年金額障害者手帳等1級=平均約158,000円
障害者手帳等2級=平均約120,000円
障害者手帳等3級=平均約59,000円
障害者手帳等1級=約81,000円
障害者手帳等2級=約66,000円
遺族年金対象者遺族厚生年金
死亡した者によって生計を維持されていた、妻、子、孫、父母
※子のある配偶者は遺族基礎年金も受け取れる。
遺族基礎年金
子のある配偶者が対象となる(基本的に18歳未満の子)
遺族年金額死亡した物の所得によって異なる。元の月収の10分の1程度。
※子のある配偶者は遺族基礎年金も受け取れる。
779,300円+子の加算
子の加算 第1子・第2子各224,300円
第3子以降 各 74,800円

個人的な感想としては、障害者年金の違いがかなり大きいなと思いました。けがをした場合などの傷病手当が健康保険であること以上に、この障害者年金が厚生年金の場合かなり手厚くなりますね。自分自身の将来設計を考える上で、この年金部分に関してはよく理解しておく必要がありそうですね。

「雇用保険」

従業員の雇用の安定や促進を目的として作られた公的な保険制度です。失業保険がよく知られているかと思います。

雇用保険の対象者

①31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。
②週に20時間以上の労働時間があること。

が対象となります。

雇用保険の保険料

平成29年度の雇用保険料は労働者負担1,000分の3、事業主負担1,000分の6です。

月収30万円の人であれば、保険料は労働者負担で900円、事業主負担は1,800円ということになります。保険料はそれほど多くありません。健康保険や年金と一緒で条件を満たしている方に対して、事業主は加入義務があります。しかし、事業主によっては加入を断られてしまうこともあります。

雇用保険のメリット

雇用保険でよく使う手当は失業保険です。現在は失業保険法は無くなり、正式名称は「求職者給付」と言います。この求職者給付をはじめ、技能就職手当、寄宿手当など細かい手当が設定されています。療法士であれば失業保険以外はあまり使うことはありませんが、気になる方は雇用保険について詳しく調べてみてください。

参考サイト:雇用保険とは何なのか、誰のためのどんなメリットがある制度かを解説

介護保険と労災保険

介護保険と労災保険は基本的に常勤、非常勤での違いはありません。個人や会社で入る、入らないを決められるわけではなく、全員が強制的に加入します。

介護保険は現在の均等割りから今後報酬割に移行し、報酬に応じての金額になるため公平性が保たれるようになるでしょう。

参考:40歳~64歳 介護保険総報酬割へ 介護保険料倍になる可能性も

まとめ

今回、常勤、非常勤での社会保険の違いを調べてみましたが、知らないことだらけで非常に勉強になりました。特に年金部分での厚生年金と、国民年金の違いには驚かされました。療法士として働くうえでも、対象となる方の収入に関わる問題ですので今回勉強できて本当に良かったです。療法士として働く上で、常勤か非常勤か迷っている方へ、非常勤は収入が良い反面のデメリットも理解していただけたのではないでしょうか?また、非常勤契約であっても社会保険に加入させてもらえる会社もありますので、会社選びの参考にもしてもらえたらと思います。今後も療法士のお金にまつわることを書いていこうと思いますのでよろしくお願いします。